💡この記事はこのような方に向けて書いています
・これからフランチャイズ展開を考えている中小企業の経営者
・フランチャイズ加盟を検討している個人・法人
・フランチャイズ契約書をレビューする弁護士
フランチャイズビジネスに欠かせない商標権
フランチャイザー(フランチャイズ本部)は 「同じ味・同じサービスを提供できる仕組み」 を売り、フランチャイジー(加盟店)は短期間で集客できることを期待してそれを買います。
フランチャイジーはフランチャイズ加盟することで、その味や同じサービスを自社ですぐに提供できるようになることだけでなく、その店の名前で商売できるということも当然に期待しています。
それに欠かせないのが商標権です。
しかし、フランチャイズ契約を締結する際に商標権のことを意識していない人が意外と多いという印象があります。
フランチャイズに商標権がなぜ必要なのか?
看板・屋号とはすなわち商標
商標により、消費者が「どこの店か」を瞬時に判断できます。
フランチャイズ加盟店は有名なフランチャイズ本部の店の名前を使って商売を開始することができるので、フランチャイズ本部が消費者の間で有名であればあるほど集客は楽です。
また、商標権があれば、偽物や模倣店を排除してブランドを守ることができます。
店名の使用許諾の根拠
「本部の店名を加盟店に使わせてあげる」というのがフランチャイズ契約の内容の一つになりますが、商標権がなければ何を根拠として店名を使わせてあげるのかという説得力が薄れます。
また、商標権がない状態で「うちの店名を使うのをやめろ」と言っても、「なんで?」となってしまいます。
お気持ちの主張だけでは根拠が弱いんです。
フランチャイズに商標権がないとどうなるのか?
フランチャイズ本部が商標権を持っていないとき、第三者がその店名の商標権を取ってしまうと、加盟店がその店名を使えなくなります。
加盟店はその店名を自分も使えることを期待してお金を払っているわけですから、店名を使えなくなると加盟店が本部へ損害賠償することもあるでしょう。
また、本部が商標権を取ってないことをいいことに加盟店がその店名の商標権を取ってしまうと、本部によるコントロールが効かなくなります。
商標権を取った加盟店が、その他の加盟店や本部へ店名の使用中止を請求することも考えられます。
商標権が無い場合の典型的なトラブル
上に書いたことと一部重複しますが、フランチャイズビジネスを行っているにもかかわらず商標権が無い場合の典型的なトラブルの説明をします。
本部が商標権を持たないまま全国展開
第三者が商標権を持っているせいで、本部や加盟店がその店名でビジネスを続けられなくなったという事例は私も実際に見たことがあります。
一店舗だけで商売しているとか、一地域だけで商売している場合には商標権者に見逃してもらっていても、他の地域に進出するタイミングで商標権者から警告書が届きがちです。
そうなると、それ以降は全ての地域でその店名の使用を許してもらえなくなるパターンが多いです。
(元)加盟店が勝手に商標権を取得
フランチャイズ契約解除の4日後に、フランチャイズ契約に関する店の名前である商標「スマホ修理王」を元加盟店が勝手に商標登録出願し商標権を取ってしまった、というスマホ修理王事件(知財高裁令和4(行ケ)10034号(令和4年9月14日判決))があります。
詳しい内容については割愛しますが、ご想像のとおり揉めに揉めています。
他にもこのようなものは多くあって、フランチャイズではないですが、暖簾分けにおいて創業者が商標権を取らないから弟子が商標権を取ってしまった、みたいな事例もあります。
本部・加盟店がそれぞれチェックすべきこと
このようなトラブルを避けるために、フランチャイズ契約を行う際に本部と加盟店のそれぞれが契約書においてチェックすべき商標的観点を挙げていきます。
別の観点から重要なことは他にもあると思いますので、これだけがフランチャイズ契約書に書かれていたら大丈夫、というわけではないことにご留意ください。
本部
・フランチャイズ契約に関する商標権を持っているか?
自社だけでビジネスを行っている場合であっても商標権が無いと危ういですが、フランチャイズではその影響が非常に大きくなります。
必ず本部が商標権を取ってください。
加盟店
・本部が商標権を持っているか?
万が一、本部が商標権を持っていないときは本部に商標権を取ってもらってください。
揉める元ですので、加盟店(予定の人)が勝手にその商標権を取ることはおすすめしません。
仮に他社が商標権を持っている場合には、フランチャイズ契約するか一から考え直したほうがいいでしょう。
・その商標権の権利範囲に自社が扱う商品・サービスが入っているか?
商標権はどんな名前をどんな商品・サービスに使うかがセットです。
飲食店のサービスを指定役務として記載しないといけないのに、テイクアウト商品の商標権しか取れてない、みたいなパターンもありますから、本部が商標権を持っているとしてもその指定商品・役務の確認が必要です。
・商標権の更新を行う
本部が商標権を持っていても、将来権利が切れては意味がありません。
「本部が責任を持って商標権の更新を行う」という条項も契約書に必要です。
・第三者による商標権侵害があったとき
第三者が勝手にその商標を使用しているとき、本部にその第三者に文句を言ってもわらないと加盟店としても困ってしまいます。
「第三者による商標権侵害を発見・認識した時には、 本部がその第三者に対し警告・訴訟を行う。」という条項が加盟店の立場としては欲しいですね。
まとめ
フランチャイズビジネスにおいて、その店名などが商標登録されていることは大前提となります。
しかし、商標権のことが意識されていない場合も多いので、フランチャイズビジネスを始めようと思う場合には商標権についても思い出してください。
(文責:弁理士 松本文彦)
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