特許は先願主義を取っており、1日でも早く出願した人が勝ちという制度となっています。
コロナ禍では公衆衛生に関する様々な特許出願がなされました。
このような社会的な一大事が起きたときには、みんなが同じ方向を向き、同じような特許出願が一気になされるので、特許出願が例えば1週間遅かったことで拒絶理由が通知されたことも多くあったと思われます。
しかし、このような社会的大事件はなかなか起きないので、短期間の間に同じような特許出願が続けてなされるということはそう多くはありません。
AI関連発明の特許出願が急増している背景
以下のグラフは特許庁から発表された令和7年度簡易型技術動向調査「AI関連発明」調査報告書から引用したものです。

この報告書では、「①AIコア発明」及び「②AI適用発明」を「AI関連発明」と呼んでいるのですが、「②AI適用発明」が増えていることで、「AI関連発明」の特許出願数が激増しています。
しかもこのグラフは2023年までのものであり、ここ最近の生成AIの急激な発達を勘案すると、2024年や2025年の出願数はさらに増加していると容易に想像できます。
「AI適用発明」はAI企業だけの話ではない
ここで「そうは言ってもうちはAI企業じゃないし」と思われるかもしれませんが「AI適用発明」とはAI企業だけに関係がある発明ではありません。
「AI適用発明」とは「画像処理、音声処理、自然言語処理、機器制御・ロボティクス、診断・検知・予測・最適化システム等の各種技術に、AI の基礎となる数学的又は統計的な情報処理技術を適用したことに特徴を有する発明」のことです。
上記グラフにあるG06Qその他(管理・経営・支払・金融に適合した情報通信技術)やG06Q50(特定の業種に適合した情報通信技術)などがこれに当てはまりますが、これは要するに、ICT(IT)を使って○○する、という発明です。そしてそのICTでの処理の中にAIを使っていればAI適用発明となります。
つまり、業務においてパソコンやスマホを使っている企業であれば、自社で使用し得る又は外販するシステム等です。
生成AIの発達により「発明の具体化」は一気に容易になった
ここで、発明の成立過程は「着想」と「具体化」に分けることができます。
生成AIがとても発達した現在、着想さえしてしまえば、生成AIを活用して具体化は以前よりも簡単にできるものが増えてきています。
つまり、バイブコーディングといって、作りたいものを通常の日本語で生成AIに伝えると、Pythonなどのプログラミング言語で出力してくれる時代になりました。
多くの場合、この出力は一度ではうまくいきませんが、エラーの内容を生成AIに伝えると生成AIがコードをどんどん修正してくれます。
このように生成AIの発達によってテクノロジーが民主化され非エンジニアでもプログラミングできるようになったことにより、どの会社でも発明が生まれるようになりました。
非エンジニアでもプログラミングできるわけですから、プログラミングすることが本業のエンジニアの開発速度が一気に上がったことは言うまでもありません。
先願主義の下で高まる特許リスクと早期出願の重要性
このように今までプログラミングできなかった企業でも「こんなものがあったらいいな」と思ってそれを生成AIに投げかけると、それを簡単かつ短時間で実現できてしまう時代です。
そして、それぞれの業種において同業者の「こんなものがあったらいいな」はかなり似たもののはずです。
したがって、特にシステムものについてはどの企業でも容易に具体化までできる=発明できるわけですから、最初に特許出願を行い特許権を取れた会社以外の会社は、最初の会社の特許権侵害になってしまう可能性がある、というなかなか大変な時代になってしまいました。
生成AI時代の今、各社の「こんなものがあったらいいな」からスタートしたAI関連発明(AI適用発明)やビジネス関連発明の特許出願が実際に乱立していますし、その統計が上記グラフです。
私自身、生成AIを活用した知財Webアプリを今年(2025年)の秋に作っていたのですが、先行技術調査を行うと、同業者が出願し今年権利化されたばかりのドンピシャの特許権を見つけてしまったので、このままでは特許権侵害になってしまうとして、その知財Webアプリのリリースを断念せざるを得ませんでした。
まずは皆さんには自社に必要なシステム等を今までよりも楽に安価に構築することにチャレンジしていただき、それに加え、同業他社の特許権侵害にならないよう、AI関連発明・ビジネス関連発明に関しては一刻も早く特許出願することをおすすめします。


