結論を言うと、特許請求の範囲(請求項)の記載で決まります。
発明の名称やその他の記載は権利範囲ではありません。
その請求項は「図面に記載のイス」のような書き方ではダメです。
「座面を上下に調整可能なイス」のように言葉で形状等を表現しないといけません。
権利範囲の具体例
では請求項に「座面を上下に調整可能なイス」と書いて特許になった場合、下記A~Fのどれが当てはまるでしょうか?
言い換えると、競合他社のどのイスが自社の特許権侵害になるでしょうか?
正解はB,E,Fです。
肘掛けがあろうが無かろうが、肘掛けを上下に調整できても調整できなくても、関係ありません。
とにかく、座面を上下に調整可能なイスはどれかを確認する必要があります。
つまり、請求項に記載していないイスの部位は何であってもいいということです。
図面のイスの脚には全てコロが付いていますが「座面を上下に調整可能なイス」であれば、コロ無しイスも権利範囲内になり得ます。
仮に、背もたれが無いイスであっても「座面を上下に調整可能なイス」であれば、権利範囲内です。
このように、請求項の記載を可能な限りシンプルにすることで権利範囲が広くなります。
審査でどのように扱われるか
一方、自社が開発したイスがFの場合に、権利範囲を広くしたいため「座面を上下に調整可能なイス」と請求項に記載したとします。
そして審査官が先行技術としてBのイスを見つけると、拒絶理由が通知されます。
「うちのイスFには肘掛けがあるのに、Bのイスには肘掛けが無いじゃないか。」と思うかもしれません。
しかし、請求項で「『座面を上下に調整可能なイス』はこの世の中に無いからこれを特許にしてください」と(事実上)自ら言っているので、Bを理由として拒絶になります。
だって、Bは「座面を上下に調整可能なイス」ですから。
ここで、この拒絶理由通知に対し、自社のイスFを意識して「座面を上下に調整可能、かつ肘掛けを上下に調整可能なイス」と補正すると、それは限定し過ぎです。
拒絶理由を回避でき、かつ出来るだけ限定をしないことで審査に通る中で最も広い特許権になります。
すなわち、先行技術Bとの差を出すために「座面を上下に調整可能、かつ肘掛けを備えるイス」と記載すれば足ります。
そしてこの権利範囲内には EとFが入ります。
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