外国出願が総崩れにならないために

特許

効率的に外国へ特許出願しよう

1つの特許権を取ってしまえば全世界で有効な世界特許・国際特許というものはありません。
特許権を取りたい国ごとに特許出願を行う必要があります

当然ながら出願国を増やせば増やすほどコストが増えます。

多くの費用を掛けたのにどの国でも特許権を取れなかった、という事態を避けたいですよね。

これは避けたい!

例えば日本の審査において、自社の特許出願とほとんど同じ内容の先行技術文献を見つけられた場合、外国でもその文献の存在を理由として拒絶になる可能性が高くなります。

そうならないための1つの方法が、日本で特許出願してそれが特許査定になることを確認してから外国出願することです。

「そんなこと、できるの?」と思われた方がいるかもしれませんが、それを詳しく説明する前に、まずは前提となる2つの制度を説明します。

パリ条約による優先権

(ざっくり説明ですが)日本出願から1年以内に外国出願することで、その日本出願を行ったときにその外国出願をした扱いとなる、という制度があります。

それをパリ条約による優先権を主張した出願を行う、といった言い方をします。
俗にパリ優先権、さらにはパリ優と略すこともあります。

これを使うと、新規性・進歩性の判断において不利な扱いにならない状況で、1年間は外国出願するかかの判断を先延ばしできるわけですから、使わない手はありません。

よって、外国出願を考えたときには、多くの場合パリ優先権を主張する方向で検討します

早期審査

次に日本の特許出願の審査に掛かる期間の話をします。

審査請求をしてから最初の審査結果が出るまで通常1年程度は掛かります
この期間、審査官がずっと審査をしているわけではなく、ほとんどの時間が審査着手までの待ち時間です。

ここで、条件を満たすと審査待ちの列を順番抜かしさせてもらえる早期審査という制度があります。
例えば資本金や従業員数が一定以下の中小企業であれば、それだけで早期審査の条件を満たします。

早期審査を使うと、最初の審査結果が2~3ヶ月で出ます。
通常に比べると、かなりの順番抜かしです。

その審査結果が仮に拒絶理由通知であっても、すぐに補正書・意見書を提出して対応すれば出願から6~10ヶ月で特許査定となり得ます。

2つを組み合わせると!

上で説明した2つの仕組みを合体させます。

(1)日本で特許出願すると同時に審査請求を行い、かつ早期審査をする。
(2)日本で特許査定になることを出願から10ヶ月くらいまでに(翻訳等の外国出願のための準備期間を考慮)確認する。
(3)日本出願から1年経過するまでにパリ優先権を主張した外国出願を行う。

日本が特許査定だと安心感が高まる

このように2つの制度を活用することで、外国も日本も総崩れという最悪の事態を避けられる可能性を高めることができます。
日本で特許権を取れない案件なら外国出願はやめておこう、という判断をするということです。

もちろん、国ごとに特許の審査を行うため、日本で特許査定になったからといって外国でも特許査定になる保証はありませんし、逆に日本では拒絶になったけど外国では特許査定になることもあります。

しかし、外国出願するための判断材料の1つとして、日本出願を早期審査することは十分検討に値するのではないでしょうか。

日本出願から1年近く経ってから早期審査しても、パリ優先権を主張できる期間内に日本出願の審査結果を知ることができないので、今回説明した早期審査+外国出願の戦略は採れません。

外国出願は計画的に。

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