この開発品は特許になる?相談前に見るべき「困りごと」と「工夫」

特許

自社で新しい製品や方法を考えたときに、これが弁理士に相談していいレベルなのかと、迷うことはあると思います。

「これは特許になるのだろうか」
「まだ試作品の段階だけど相談してよいのだろうか」
「少し工夫しただけなので、特許を取れるほどではないのではないか」

そのように思われる中小企業やスタートアップの経営者の方も多いのではないでしょうか。

ただ、自社でその製品や方法を新しく開発したということは、何らかの困りごとがあったはずです。

なぜなら、従来のもので十分であれば、その製品を購入したり、従来の方法をそのまま使ったりすれば済むからです。わざわざ開発の時間やお金をかける必要はありません。

自社の開発品を見るときには、まず「どのような困りごとがあったのか」を考えてみるとよいと思います。
そして、その困りごとを解消するために自社で何か工夫をしたのであれば、その工夫が特許になる可能性があります。

自社で開発した背景には、何らかの困りごとがある

特許になるかどうかを考えるときには、開発品全体を漠然と見るよりも、まず開発のきっかけを振り返ってみると考えやすいです。

たとえば、従来品が使いにくかった。
従来品ではコストが合わなかった。
従来の方法では作業に時間がかかっていた。
従来品では特定の現場に合わなかった。
従来品をそのまま使おうとしたら、安全性に不安があった。

このような困りごとがあったからこそ、自社で開発を進めたはずです。

もちろん、最初から「この課題を解決するために開発しよう」とはっきり意識している場合もあります。
一方で、最初はそこまで明確ではなく、「既存のものを少し変えれば使えるのではないか」と考えて開発を始める場合もあると思います。

しかし、実際に開発を進めてみると、そのままではうまくいかないことがあります。
そのときに出てきた困りごとを解消するために工夫したのであれば、そこにも特許の可能性があります。

特許になるかどうかは「差分」に注目する

特許になるかどうかを考えるときには、従来の製品や方法との違いを見ることが大切です。

従来の製品にはなく、自社の開発品にはある部分。
従来の方法では行っておらず、自社の方法では行っている部分。

つまり、従来との「差分」です。

その差分が、何らかの困りごとを解消するための工夫となっている場合が多いのではないでしょうか?

たとえば、従来品では使いにくかったので、部品の配置を変えた。
従来品では強度が足りなかったので、構造を変えた。
従来の方法では作業に時間がかかっていたので、手順を変えた。
従来品では特定の現場に合わなかったので、使い方や形状を変えた。

このような場合には、その変更した部分に特許の可能性があるかもしれません。

大切なのは、単に「新しい製品を作った」ということではありません。

困りごとは、最初から見えている場合と、開発途中で見えてくる場合がある

ここでいう困りごとには、最初から見えているものと、開発途中で見えてくるものがあります。

1つは、従来の製品や方法について、最初から困りごとがあった場合です。

従来品が使いにくい。
従来品が壊れやすい。
従来品ではコストが合わない。
従来の方法では作業に時間がかかる。

このような困りごとがあり、それを解消するために開発した場合には、その困りごとを解消するためにどこを工夫したのかが、特許を考えるうえで重要になります。

もう1つは、従来の製品や方法を別の用途に使おうとしたところ、開発を進める中で困りごとが見えてくる場合です。

この場合、従来の製品や方法は、もともとの用途では問題なく使えていたかもしれません。

しかし、別の用途に展開しようとすると、そのままでは使いにくい、安全性に不安がある、操作しにくい、強度が足りない、といった困りごとが出てくることがあります。

このように、開発途中で見えてきた困りごとも、特許を考えるうえでは重要です。

なぜなら、その困りごとを解消するために試行錯誤した部分に、自社の工夫が表れるからです。

別用途に展開しようとして見えてくる困りごと

たとえば、ある用途の中高生向けの製品は従来からあったけれど、高齢者向けの製品はなかったとします。
この場合、中高生向けの製品をそのまま高齢者向けに使えるのであれば、特許を取ることは難しいでしょう。

しかし、高齢者向けにしようとすると、中高生向けの製品とは違う困りごとが出てくることがあります。

たとえば、握りにくい。
表示が見にくい。
力を入れにくい。
操作を間違えやすい。
転倒や誤操作のおそれがある。
安全性に不安がある。

このような困りごとは、高齢者向けに展開しようとして初めて見えてくることがあります。

そして、その困りごとを解消するために、持ち手の形状を変えた、操作方法を変えた、安全機構を追加した、表示の仕方を工夫した、力を入れやすい構造にした、ということであれば、その工夫に特許の可能性があります。

完全に横展開で済む場合には、横展開後の製品について特許を取ることは難しいです。

しかし、横展開しようとしても素直に横展開できなかった。
横展開するために、何らかの工夫が必要だった。

そのような場合には、その工夫について特許出願を検討する価値があります。

「応用しただけ」と思っている部分に工夫があることもある

自社では、「これは既存品の応用にすぎない」と思っていることがあります。

たしかに、本当にそのまま応用しただけであれば、特許を取ることは難しいと思います。

しかし、「応用」といっても、そのままでは使えず、使えるようにするために何か工夫をしていることがあります。

少し形を変えただけ。
少し配置を変えただけ。
少し手順を変えただけ。
少し安全対策を加えただけ。

自社の中では、そのように見えているかもしれません。

しかし、その変更がなければ不便だったのであれば、その変更には意味があります。

特許になるかどうかは、従来技術との関係で具体的に判断する必要がありますが、少なくとも「応用しただけだから相談する価値がない」と決めつける必要はありません。

既存のものを別の用途に展開するために何か工夫をしたのであれば、一度特許の観点から見てみる価値があります。

弁理士に相談するタイミング

特許については、製品が完成してから、あるいは販売を始めてから相談するものだと思われている方もいます。
しかし、特許出願を考えるのであれば、外部に公開する前に相談することが望ましいです。

まだ試作品の段階であっても、図面や写真、簡単な説明資料があれば相談できます。完成品になっていなくても、どの部分に工夫があるのかを一緒に整理することはできます。

むしろ早い段階で相談することで、どの部分を特許出願の対象として考えるべきか、販売前や展示会前に何に注意すべきかを確認しやすくなります。

迷ったときは、「困りごと」と「工夫」を見てみる

自社の開発品について特許出願を検討する場合には、まず次のように考えてみてください。

従来の製品や方法には、どのような困りごとがあったのか。
その困りごとを解消するために、自社の開発品ではどこを変えたのか。
あるいは、別の用途に展開しようとしたときに、どのような困りごとが見えてきたのか。
その困りごとを解消するために、どのような工夫をしたのか。

困りごと解決のための工夫があるようであれば、特許事務所に相談する価値は十分にあります。

この記事を書いた人

松本特許事務所代表弁理士。
知財部がない中小企業の支援を専門とし、機械・IT分野の特許、ノウハウ管理、意匠、商標と一人でオールラウンドに見ることができる弁理士として活動しています。

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