生成AIで作ったロゴやキャラクター、そのまま使って大丈夫?

商標

最近、「会社のロゴを生成AIで作ってみました」「マスコットキャラクターをAIに描いてもらいました」というお話をよく伺うようになりました。
また、アイキャッチ画像を生成AIで作ることもあるでしょうし、、実写に近いような人物の写真のようなものも出力してくれます。

デザイナーさんに頼むと時間も費用もかかりますが、生成AIなら思いついたその日に、それらしいものが何パターンも出てきます。便利な時代になったものです。

ただ、生成AIで作ったロゴやキャラクターには、人間が一から描いた場合とはちょっと違う注意点があります。

結論:作ってOK。ただし「作ったあと」が大事

先に結論を言ってしまうと、生成AIでロゴやキャラクターを作ること自体は、まったく問題ありません。

気をつけてほしいのは、出来上がったものをそのまま使い始める前です。具体的には、こんな流れをおすすめしています。

  1. 生成AIで作る
  2. Google画像検索などで、似たものが世の中にないか調べる
  3. 似たものが見つかったら、そのまま進めずに、デザインを直すか、専門家に相談する

「なんでそんなことが必要なの?」と思われたかもしれません。その理由が、今日いちばんお伝えしたい「依拠(いきょ)」という考え方です。

生成AIならではの落とし穴、「依拠」

他人の作品の「真似」が著作権の問題になるのは、ざっくり言うと、その作品を知っていて、参考にした場合です。これを「依拠」といいます。

逆に言うと、その作品を見たことも聞いたこともないのに、たまたま似たものを作ってしまった場合は、依拠していないので著作権の問題にはなりません。世界は広いので、偶然似てしまうことはあるよね、ということです。

人間が自分の手で描いた場合は、これでよかったのです。「その作品、見たことありません」と言えれば、偶然の一致はセーフでした。

ところが、生成AIだと話が変わってきます。

生成AIは、インターネット上のたくさんの画像を学習して作られています。ということは、あなたが見たことのない作品でも、AIは「見ている」(学習している)かもしれないのです。

この点について、文化庁が公表している「AIと著作権に関する考え方について」という資料では、おおよそ次のような整理がされています。

利用者本人がその作品を知らなくても、AIがその作品を学習していた場合に、似たものが生成されたときは、ふつう、依拠があったと推定される

つまり、生成AIを使うと、「知らなかった」「見たことがない」という言い分が通用しにくくなるのです。しかも、「AIはその作品を学習していませんでした」と利用者の側で証明するのは、現実にはほぼ不可能です。AIの中身は、使っている私たちには見えませんから。

これが、生成AIならではの落とし穴です。

そして、ここまで読んでいただくと、先ほどの「作ったあとに画像検索」の意味が見えてくると思います。自分が知らない作品と似てしまっていないか、後から自分の目で確かめる。 生成AIを使うときは、このひと手間が、人間が描くとき以上に大切になるのです。

実際問題、私が弁理士業務を行っている中で、生成AIは学習元のデータを(ほぼ)そのまま出力してしまうことが意外とあるということが見えてきました。

「似ている=アウト」ではないけれど

ここで一つ、誤解のないように付け加えます。

画像検索で似たものが見つかったとしても、それだけで著作権の問題になるとは限りません。

たとえば「丸くてかわいい体に、ニコニコの顔」「元気なイメージのキャラクターだから野球帽」といった要素は、誰が作っても似てくる、いわば定番の組み合わせです。著作権は、こうした定番の部分やアイデアまでは守っていません。なので、パッと見の印象が近くても、法律的にはセーフ、というケースはたくさんあります。

「じゃあ気にしなくていいの?」というと、そうでもないのが悩ましいところです。

法律的にセーフかどうかと、トラブルになるかどうかは、別の問題なんです。相手から「似ている」と言われてしまうこと自体は、止められません。それに今の時代、こわいのは相手からの抗議だけではありません

SNSで「あの会社のキャラ、〇〇に似てない?」と話題になってしまう、いわゆる炎上リスクもあります。実はこの炎上リスク、先ほどの文化庁の資料の中でも、「法律的には問題がない場合でも、非難を受けてしまうおそれがある」という形で、わざわざ取り上げられているほどです。

そもそもロゴやキャラクターは、お客様に親しみを持ってもらい、会社のブランド価値を高めるために作るものですよね。そのキャラクターが、「似ている」という話題とセットで語られるようになってしまっては、本末転倒です。露出すればするほど、かえってイメージを下げてしまう——そんな悲しいことにもなりかねません。

セーフかアウトかの線引きは正直、専門家でも慎重に検討する部分です。だからこそ、似たものが見つかったときは、「諦める」でも「気にせず進める」でもなく、いったん立ち止まって相談していただくのが安心です。

商標登録との関係

「商標登録さえ取れば安心ですよね?」と聞かれることがありますが、ここにも一つ注意点があります。

実は、著作権の問題は、商標の審査ではチェックされません。 ですから、似たキャラクターが世の中にあっても、商標登録自体は取れてしまうことがあります。

ところが商標のルール上、登録が取れても、先にあった他人の著作権とぶつかる場合には、その商標を使えないことがあるのです。「登録は取れたのに、使えない」——これでは本末転倒ですよね。

商標の出願を考えるときは、登録できるかどうかだけでなく、安心して使い続けられるかまで見ておく必要があります。

生成AIでロゴ・キャラを作るときの4つの習慣

最後に、実務的なポイントを4つにまとめます。

  1. 作るとき:他人の画像をそのままAIに読み込ませたり、特定の作家名・作品名を指示に入れたりしない(これをやると、依拠が認められやすくなります)
  2. 作ったあとGoogle画像検索などで、似たものがないか自分の目で確認する
  3. 記録を残す:いつ、どのAIサービスで、どんな指示で作ったかを保存しておく(万一のときに、あなたを守る材料になります)
  4. できれば人の手で仕上げる:AIの案をたたき台に、デザイナーさんに手を入れてもらう。似たものとの距離が取れるうえ、人の創作が加わることで、今度は自社のキャラクターを著作権で守りやすくなるというメリットもあります

おわりに

生成AIは、上手に付き合えばとても心強い道具です。「使わない」のではなく、「使ったあとにひと手間かける」。これだけで、リスクはぐっと小さくできます。

「画像検索したら、ちょっと似たものが出てきた…」「このキャラクター、商標を取って大丈夫?」——そんなときは、自己判断で進める前に、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を書いた人

松本特許事務所代表弁理士。
知財部がない中小企業の支援を専門とし、機械・IT分野の特許、ノウハウ管理、意匠、商標と一人でオールラウンドに見ることができる弁理士として活動しています。

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