無事に審査を通り商標を登録できたらひと安心ですが、その後も少しだけ気をつけておくべきことがあります。
他者に警告する前に弊所までご相談を
自身の権利範囲を広く考えがち
商標権が取れた後には自身の商標権の権利範囲を広く解釈する方がいらっしゃいます。
つまり、本来は警告すべきではない相手にまでついカッとなって文句を言ってしまうことがあり、これはよろしくありません。
他者に警告したい場合には、まずは落ち着いて弊所までご連絡ください。
権利主張していいパターンであるのか冷静に見極めますので、確かに文句を言うべきだと判断できた場合にはその後で警告しましょう。
炎上リスク
正当に商標権を取得していても、最近はSNS等での炎上リスクがあります。
商標権を取得しただけでも炎上リスクがある部類の商標の場合、その商標権に基づいて警告をすると確実に炎上してしまいます。
正当に商標権を取得しているのだから法律論としては何も問題ないのですが、たとえ感情論であっても炎上すると商標権者にとって不利益になりますので、こちらのリスクについても警告前に弊所にて検討します。
異議申立て
ざっくりいうと商標権を取ってから2ヶ月間は、その商標権に対して第三者が異議申立てをできます。
要するに「本来は登録を認めちゃいけなかったものについて、審査官が誤って登録にしてしまったから再度審査をやり直せ!」と第三者が特許庁に比較的カジュアルに文句を言えます。
その商標権は登録されるべきではなかったとして商標登録された後に潰す方法としては異議申立てと無効審判がありますが、商標権を潰したい人にとっては異議申立てのほうが申立て(請求)のハードルが低い制度になっています。
したがって、異議申立て期間の2ヶ月は、他者がその登録商標を使用していたとしても異議申立てという反撃をされないように警告せず、我慢して待っておくほうが望ましいです。
登録した商標をその指定商品・役務に使用する
商標が登録されても、その登録商標を直近3年間で一度も使用していなければ、万が一それを使用したい第三者が現れ不使用取消審判を請求されると、登録が取り消されます。
商標法では登録商標が商標権者によって長期間使われていないなら他の使いたい人に使わせてあげようという制度になっています。
登録商標に似ている商標しか使用していない状況では、不使用取消審判に対抗できるかどうか不安が残ります。
したがって、登録商標をそのままその指定商品・指定役務に使用することが不使用取消審判で潰されないために重要です。
ただし、登録商標しか使用してはいけないわけではありません。
「他の態様で使用するのもいいけど、登録したそのまんまの態様の商標も使用してください」ということです。
また、登録商標の指定商品・指定役務とは異なる商品やサービスにもその登録商標を使用したくなることがありますが、そのような場合には追加の商標登録出願を行わないと適切に保護されないので注意が必要です。
なお、登録から3年経つ前に不使用取消審判で取り消されることはありません。
この3年は商標を使用するための準備期間として猶予されています。
®を付けることができる
商標登録後には登録商標に®(Rマーク)を付けることができます。
登録商標に®を付ける法律上の義務はありませんが、®を登録商標に付けると次のような効果があります。
®の効果
- 不特定多数にその商標が登録商標であることをアピールでき、他人に登録商標を真似されにくくなる
- 後述する普通名称化を防ぐ一定の効果がある
- ブランドとして確立しやすくなる
®の付け方
一般的な®の付け方です。ルールがあるわけではありません。
※登録商標がABCの場合
®はもう少し小さくてもいいかもしれません。
それも含め、お好みでどうぞ。
普通名称化の防止
普通名称化すると商標権が制限される
せっかく商標権を取得しても、不特定多数の者に登録商標を無断で使用された場合には、商標登録後に後発的に識別力が無くなり、登録商標が普通名称化する可能性があります。
普通名称化すると何が起きるかというと、商標権を持っていても他人がその商標を勝手に使用したときにやめさせることができなくなります。
例えば、「エスカレーター」は元々登録商標でしたが、色んな会社・人が「エスカレーター」の商標を使用した結果、普通名称化してしまいました。
登録商標の普通名称化を防止するには、登録商標の無断使用を見つけたときに地道に警告をして無断使用者が増えないよう努力することが重要です。
普通名称化しやすい場合
自社の提供する商品・サービスが先進的であり、他社から同種の商品・サービスがまだ出されてない場合には要注意です。
なぜなら、最初の商品・サービスの商標が普通名称として広まる可能性が高いからです。
他にはない商品・サービスを自社が初めて提供する場合には、自社でその普通名称を決めるとともに、自社の商標を何にするか同時に考えたほうが良さそうです。
先ほどのエスカレーターの場合、例えば普通名称「階段式昇降機」である商標「エスカレーター」と決めて、しっかりと管理すれば「エスカレーター」が普通名称化しなかったかもしれません。
商標権を維持したいなら更新を
商標権は更新料さえ支払えば、半永久的に持つことができる権利です。
登録から5年後、または10年後の更新を忘れないようにしましょう。
Web会議にて全国対応可能